2020年は、「新しい日常」のようなフレーズをたくさん聞きました。
「日常」を集団レベルで殊更に意識するのは、「非日常」である災害時や、今回のような感染拡大といった事態が起きた時が多いように思います。
しかし、実はわたしたち一人ひとりにとって、「日常」を変更しながら生きるということは、それほど珍しいことではないかもしれません。
たとえば、私は半年前に犬を飼い始めたのですが、それまでまったく気にしなかった視点で買い物先を考えるようになりました。たとえば、「あの店なら犬も連れていける」「あの店には犬用のカートがある」「駐車場にドッグランがある」「犬は入れないけど、ペット用品が充実してるのはこの店」など。
うちの犬はペットですから、入店NGでも仕方ないわけですが、人が買い物をしたり移動をしたりするうえで欠かせない存在である盲導犬や介助犬等となると話は別です。多くの店は、ペットはNGでも盲導犬・介助犬などの入店は受け入れていると思います。しかし、いまだに盲導犬や介助犬の入店拒否事例等がなくならないことを思うと、まだまだ「社会の土台」(『ふらっとライフ』序章参照)が穴だらけであることを改めて実感せざるを得ません。
思い返せば、引っ越して居住環境が変わったとき、新しい学校に入学したとき、子どもが生まれたとき、就職したときなど、これまでの人生のなかで、自分の「日常」のあり方が変化する機会は何度もありました。
状況は変わらなくても、新しい視点を手に入れた時だって、「日常」は変わります。
たとえば今まで気にならなかったテレビ番組が、「ジェンダー」の視点を学んだとたん、不愉快に思えたり、逆に感慨をおぼえたり。
『ふらっとライフ』には、それぞれの「日常」が変化する場面が多く登場します。
執筆者本人の生き方が変わったり、新しい出会いを経験したり、今までと違う考え方を手に入れたりしたときの状況、それに伴う葛藤などが、丁寧に描かれています。
「日常」のあり方が問われている今こそ、ぜひ多くの人に読んでいただきたいと思っています。
2021年1月4日
伏見裕子
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